こんにちは。
網野智世子です。
私たち日本語ネイティブは端的にいえば
「動詞に弱い」ため、
英語をはじめフランス語、
そしてそれ以外の言語を学ぶ上で
ハンディキャップとなります。
私たちが日本語を母語としていることで
どういう影響を受けるのか、
それをよく理解していないと
「フランス語を勉強しているのにいつまでも上達しない」
「XX語は何年もやっているけどいまいちうまくいかない」
という悩みを抱え、
そしてその原因も分からずに、
得られるはずの有形無形の財産を
得ることなく人生を終えてしまう・・・
ということになりかねません。
ではなぜ、
日本語は動詞の地位が低いのか・・・
ここで
「動詞の地位が低い」
とは具体的にどう言うことでしょうか。
それは、おおまかに
「動詞の語彙が少ない」こと、
「文を作る上で一般動詞を使う頻度が相対的に低い」こと
であるといえます。
では、なぜ日本語はそのように動詞の語彙が少なく、
文を作る上で一般動詞を使う頻度が低いのでしょうか。
考えられる理由の1つ目は、日本語の
「文構造の特徴」
です。
よく
「英語は動詞が主語の次にくるけど、
日本語は動詞が文の最後に来る」
といいますよね。
これは「英語」を「フランス語」にいいかえても同様です。
これは、どの言語にもある「(文の)主部」と「述部」のうち、
動詞が属する「述部」が最初の方に来るか後の方に来るかの違いです。
(文型にたとえて「SVO言語か、SOV言語か」という言い方もできます。)
日本語は後者に属しますが、
このような特徴を持つ言語は韓国語ほか、
いわゆる「ウラル・アルタイ語系」の言語(フィンランド語、ハンガリー語、トルコ語など)や、
モンゴル語/モンゴル系諸語、ペルシャ語等イラン系言語、
インド系言語(ヒンディー、ネパール語・・)など相応に存在します。
ただし、述部が最後にあっても、ただそれだけでは動詞の語彙が
少なくなることや動詞を使う頻度が低くなることを完全には
説明できないと思います。
私の考えでは、日本語では述語の中で主な機能を果たす言葉、
文法用語で(活用する語、という意味で)「用言」と呼ばれる言葉
として動詞以外に形容詞があり、
この形容詞が動詞と似たような活用パターンをもち、
しばしば動詞にとってかわることが
日本語の中で動詞を弱める原因の一つであるとみています。
「活用」といいましたが、
あなたが中学の国語で習った現代国語文法か、
高校の古文で習った古典文法を思い出してみてください。
「未然形、連用形、終止形、連体形、仮定形(古文では已然形)、命令形」
というパターンです(忘れているかもしれませんが・・・)。
動詞と形容詞(+形容詞の一種ともいわれる形容動詞)はともに
この6パターンに従って活用しています。
試しに、「書く」とか「読む」とか「寒い」とか「美しい」とか、
適当な動詞や形容詞を思い浮かべてみてください。
※「書く」という動詞を例にとると
「書か(ない)」
「書き(ます)」
「書く」
「書く(こと)」
「書け(ば)」
「書け」
のように活用します。
これは日本語ネイティブの私たちは、
普段何も考えずに活用しています。
「美しい」という形容詞も、
動詞と同じようなパターンで活用されます。
・・・このことから、次のようなことが導かれます:
1.日本語の動詞は(中国語などと違って)活用変化はするが、
それは英語のように時制を軸としたものではなく、
その表す内容や後にくる言葉の品詞の性質に従った
変化パターンをとる。
そしてそのパターンは形容詞と同様である。
2.他方で、「寒かった」「寒ければ」など、
形容詞の活用形1語で(厳密には助動詞を伴うが、語数としては1つの語で)
意味的に過去・未来などの時制概念を表すことができる。
これは英語ではwas coldのwasのようなbe動詞、
その他の言語では主として「状態動詞」とよばれる動詞の一種を
付加して2以上の語数で表すことと明確に異なっている。
・・・これだけでも、
日本語では述語として「形容詞」が強い力をもつ
ことがおわかり頂けると思います。
少し難しい説明になってしまったかもしれません。
次回、より分かりやすくまとめた内容をお話させていただきますね。
網野智世子